

クラウンプライドは早くから日の当たる道を歩んできた。ドバイ・UAEダービーを完勝。続くケンタッキーダービー13着から帰国後、3歳馬ながらJBCクラシック(盛岡)2着、チャンピオンズカップ2着。
翌年も中東2戦5着から帝王賞2着。続くGⅢ・コリアカップ(ソウル)を圧勝し、G/JpnⅠも手に届くまで迫ったが、以降は3戦連続で大敗。陣営にとってマーキュリーC参戦は、復活を賭けた戦いでもあった。
最内枠メイショウフンジンの逃げが大勢の見方だったが、ヒロシクンが激しく先手を主張。酒井学騎手はスタート200m手前で控えて外に出そうとしたが、クラウンプライドが外から被せる。横山武史騎手は当面のライバルをうまく閉じ込めることができた。
3コーナー過ぎ、クラウンプライドがヒロシクンを馬なりで交わして先頭。あとはピッチを上げ、独走状態に持ち込んだかと思ったが、前半のハイペースがこたえてラスト1ハロンで一杯。ビヨンドザファザーが上がり36秒2の末脚で猛追したが、ハナ差しのいで重賞3勝目。国内では初の重賞を手にした。
続くコリアカップでは前年のマーキュリーC覇者ウィルソンテソーロを相手に0秒9差で逃げ切り勝ち。2連覇を達成して“ジャパン・ホース強し”を高らかにアピールした。

コースの見どころ

JpnⅢ「第29回マーキュリーカップ」の舞台は盛岡ダート2000m。4コーナーポケットからスタートして1コーナーに入るまで約700m。枠順の有利不利はほとんどないが、時に内枠を引いた馬には厳しいケースもある。
昨年のメイショウフンジンが典型例。プレイバック2024でも報告したが、鞍上・酒井学騎手が「枠順が発表されたとき、嫌な枠だと思った」という。
また2022年、2023年で連続2着を確保したテリオスベルは2番枠、4番枠を引き当てた。砂を被ると嫌がるため、一旦後方まで下がってしまった。それでも強引にまくって早め先頭。2着を確保したが、コーナー入りまで約700mもあれば大外に入った先行タイプでも自己ポジションを取れる。
隊列が落ち着いても油断はできない。1コーナーでペースは落ちるが、2015年ユーロビートは2コーナーから一気にスパート。“意表を突く”まくりを決めて6馬身差で圧勝した。先に記したテリオスベルも同様の戦法に出た。
基本的な勝負どころは3コーナーだが、残り800mで各馬が徐々に動き始める。そこからペースアップして直線の攻防に入るが、ラスト300mから上り坂。スタート後、ファイナル・ゴールまで2度の高低差4・4mが相当こたえる。
ダート競馬のチャンピオン・ディスタンス(距離)は2000m―が世界共通の認識。盛岡ダート2000mのコース形態は盛岡ダート1600mと並び、チャンピオンホースを決めるにふさわしい舞台。攻略法はない。真に強い馬が勝つ。
大荒れか、順当か。マーキュリーカップは極端
1着 | 2着 | 3着 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | |
1番人気 | 4回 | 1回 | 1回 | 40% | 50% | 60% |
2番人気 | 4回 | 1回 | 1回 | 40% | 50% | 60% |
3番人気 | 0回 | 3回 | 3回 | 0% | 30% | 60% |
4番人気 | 1回 | 3回 | 0回 | 10% | 40% | 40% |
5番人気 | 0回 | 0回 | 3回 | 0% | 0% | 30% |
6人気以下 | 1回 | 2回 | 2回 | 10% | 30% | 50% |
過去10年、1番人気4勝、2番人気4勝と一見すると本命サイドで決着している印象があるが、2015年、2016年までは大荒れ。
2015年は6番人気→3番人気→5番人気で入線し、3連単11万2860円。翌年も2番人気→9番人気→5番人気で3連単が17万9810円と2年連続で超万馬券。さらに2022年、2番人気→7番人気→10番人気と入り、3連単63万5880円のマーキュリーC史上最高配当が飛び出した。
マーキュリーCは人気サイドで決着か、大荒れかの両極端なケースが考えられる
過去10年→過去5年の世代別上位馬に地殻変動あり
1着 | 2着 | 3着 | |
4歳 | 4回 | 2回 | 2回 |
5歳 | 4回 | 4回 | 3回 |
6歳 | 2回 | 2回 | 1回 |
7歳 | 0回 | 0回 | 3回 |
8歳 | 0回 | 2回 | 1回 |
9歳 | 0回 | 0回 | 0回 |
過去10年は4~6歳馬が優勝。2、3着も同様だが、8歳馬が2着2回。3着は4歳から8歳までまんべんなく出ている。 しかし、過去5年のデータになると様相がガラリと変わる。
1着 | 2着 | 3着 | |
4歳 | 3回 | 2回 | 1回 |
5歳 | 2回 | 2回 | 2回 |
6歳 | 0回 | 1回 | 1回 |
7歳 | 0回 | 0回 | 1回 |
8歳 | 0回 | 0回 | 0回 |
9歳 | 0回 | 0回 | 0回 |
過去5年の優勝馬は5歳以下。5歳優勝は昨年クラウンプライド、2021年、マスターフェンサーが2連覇目を果たしたもの。 一昨年は1着ウィルソンテソーロ(4歳)、2着テリオスベル(6歳)、メイショウフンジン(5歳)。2022年は1着バーデンヴァイラー(4歳)、2着テリオスベル(5歳)、3着ヴァケーション(5歳)。近5年に限ると上位馬の若さが顕著となっている。果たして6歳、そして7歳以上の巻き返しがあるか。
マーキュリーCトップハンデの結果は?
2024年 | 1着・クラウンプライド=57キロ |
8着・スワーヴアラミス=58キロ | |
2023年 | 1着・ウィルソンテソーロ=55キロ |
4着・バーデンヴァイラー=55キロ | |
5着・サンライズホープ=55キロ | |
2022年 | 1着・バーデンヴァイラー=54キロ |
8着・ノーヴァレンダ=57キロ | |
2021年 | 1着・マスターフェンサー=58キロ |
4着・デルマルーヴル=57キロ | |
2020年 | 1着・マスターフェンサー=54キロ |
2着・デルマルーヴル=57キロ | |
2019年 | 1着・グリム=56キロ |
ほかはすべて54キロ | |
2018年 | 1着・ミツバ=55キロ |
5着・マイネルバサラ=57キロ | |
2017年 | 1着・ミツバ=54キロ |
3着・クリノスターオー=56キロ | |
2016年 | 1着・ストロングサウザー=55キロ |
7着・ソリタリーキング=58キロ | |
2015年 | 1着・ユーロビート=54キロ |
2着・ソリタリーキング=58キロ |
【参考】
2010年 1着・カネヒキリ=59キロ
2008年 1着・サカラート=58キロ
マーキュリーCはグレード別定戦。3歳=50キロ(牝馬は2キロ減)、4歳以上=54キロ(牝馬は2キロ減)を基本に
GⅠ/JpnⅠ優勝馬 5キロ増
GⅡ/JpnⅡ優勝馬 3キロ増
GⅢ/JpnⅢ優勝馬 1キロ増
さらにG/Jpn競走・通算3勝以上は1キロ増。さらに2勝ごとに1キロ増。カネヒキリはグレード別定以前なので当時の最高負担重量59キロだった。
過去10年、58キロの負担重量で優勝したのは2連覇を果たしたマスターフェンサー1頭のみ。トップハンデを背負った馬は思った以上に苦戦している。
今後もマーキュリーカップが楽しくなるコンテンツが続々登場!
お楽しみに!