2024年、ダート三冠体系が本格的にスタートした。それに伴い、岩手伝統の3歳重賞・不来方賞はJpnⅡへ昇格。三冠目ジャパンダートクラシック(大井)・トライアルへ移行し、岩手競馬では初のJpnⅡ戦が実施された。
JRAからダート三冠目を狙うサンライズジパング、カシマエスパーダら4頭が参戦。北海道から北斗盃馬ブラックバトラー、北海優駿馬パッションクライ。
迎え撃つ岩手勢は8戦無敗で岩手二冠を制したフジユージーンが名乗りをあげ、平日火曜日だったにもかかわらず多くのファンが盛岡競馬場を訪れた。
レースは主導権を握ったカシマエスパーダが直線半ばまで快調に飛ばしたが、好位追走サンライズジパングが残り100mで捕らえると、あとは突き放す一方。能力の違いマザマザに3馬身差で完勝した。一方、フジユージーンは善戦及ばず4着。初の敗戦を喫した。
武豊騎手「気難しい面、クセがある馬だが、今回はいいポジションが取れて流れにも乗ることができた。この馬は未完成な段階。素質だけで走っている感じ。もっと強くなれると思います」
続くジャパンダートクラシックはフォーエバーヤングの3着に完敗したが、GⅠ・フェブラリーS2着、JpnⅡ・名古屋グランプリを優勝。現在はダート界の強豪たちに肩を並べている。
一方、フジユージーンは3歳地方競馬全国交流・楠賞(園田)を優勝。岩手の年度代表馬に選出された。今春2戦は2着だったが、秋は青藍賞からJpnⅠ・マイルCS南部杯を目指す。
昨年、ダート三冠体系が本格的にスタートを切ったが、歩調を合わせるかのようにダート3歳世代は大豊作年だった。まずは時系列で報告してみたい。
一冠目「第69回羽田盃」(大井1800m)は母ユキチャン譲りの白毛アマンテビアンコ(父ヘニーヒューズ)が1番人気に応えて優勝。その後は長期休養を余儀なくされているが、アイドルホースの復帰を待ちたい。
二冠目「第70回東京ダービー」(大井2000m)はラムジェットが2着サトノエピックに6馬身差をつけて圧勝。ダート4連勝を飾り、ユニコーンステークスに続いて重賞2連覇を果たした。
そして三冠目「第26回ジャパンダートクラシック」(大井2000m)は貫禄の違いを見せつけてフォーエバーヤングが完勝。2着はレパードステークス優勝ミッキーファイト、3着は不来方賞馬サンライズジパング、4着ラムジェット、5着シンメデージー(高知)、10着フジユージーン。この後の活躍は省略させていただくが、興味がある方は調べてほしい。海外も含めて日本ダート界の顔となっている。
提供:TCK(東京シティ競馬)
今年(2025年)のダート三冠はナチュラルライズ(牡3歳 父キズナ 伊藤圭三きゅう舎・美浦)一強の様相を呈している。
一冠目・羽田盃は好位3番手を追走し、直線で抜け出すと内ラチ沿いに切れ込みながらも、そのまま押し切って2着ナイトオブライフ(大井)に5馬身差で圧勝。
二冠目・東京ダービーは羽田盃と同様、スマイルマンボが先手を取ったが、ナチュラルライズが掛かって1周目スタンド前では暴走気味に先頭。以降も折り合いを欠きながら突っ走り、直線ではラチにぶつかるぐらいササりっ放し。鞍上・横山武史騎手が必死に矯正しながら2馬身半差でゴール。
普通なら失速するケースだったが、東京ダービーのレコードまでも更新。周囲の度肝を抜いた。
ナチュラルライズは三冠目・ジャパンダートクラシックへ直行を表明済み。今年の不来方賞は、ナチュラルライズの三冠を阻止する馬が誕生するか―が最大テーマとなった。
現時点での出走予定メンバーは、まさに“打倒”ナチュラルライズにふさわしいメンツがそろった。ダートグレードこそ手にはしていないが、全国から魅力あふれる3歳強豪が終結する。三冠最終決戦の切符を獲得できるのはどの馬か。熱視線を送ってほしい。
有力馬の紹介
ナルカミ
牡3歳 父サンダースノー
田中博康きゅう舎・美浦
昨年11月、京都ダート1800m・2歳新馬戦を2着に2秒差をつけて圧勝。2戦目はダッシュひと息ながら再び先手を主張し、前半1000m1分1秒5のハイラップで逃げたが、直線一杯7着に沈んだ。勝ったドンインザムードはUAEダービー3着、レパードステークスを優勝した強豪だった。その後、3ヵ月半の休養を経て復帰し、2番手キープから直線で一旦交わされたが、再び差し返して快勝した。前走は福島ダート1700m・3勝クラスへ向かい、5馬身差で圧勝。上がり36秒8の末脚を使ってハイタイムで圧勝した。デビュー4戦ともすべて1番人気が期待値の証。重賞初挑戦でJpnⅡ制覇へまい進する。
ルヴァンユニベール
牡3歳 父ホッコータルマエ
北出成人きゅう舎・栗東
京都ダート1800m・2歳新馬戦10番人気3着後、2連勝をマーク。4戦目から連続4着に終わったが、前々走・3歳以上2勝クラスでクビ差2着からGⅢ・レパードステークスへ挑戦。12番人気の低評価を覆し、中団キープからインを鋭く突いて半馬身差2着に突っ込んだ。その時の馬体重が560キロ。パワーを要求される地方ダートは望むところだろう。
ロードラビリンス
牡3歳 父ミッキーアイル
松下武士きゅう舎・栗東
京都芝1600m・2歳新馬7着後、2戦目に中京ダート1800mを選んで0秒4差で完勝。以降4戦2着2回から3走前の京都ダート1800mを中団に控えて4角先頭。ロングスパートを決めて快勝した。続く2勝クラス・加古川特別では逃げたメイショウズイウンと直線叩き合いの末にハナ差で1着。2連勝を飾り、レパードステークスへ駒を進めて10着。不良馬場にも泣いた印象だったが、ダメージは少なく反撃必至。
メイショウズイウン
牡3歳 父ホッコータルマエ
本田優きゅう舎・栗東
2歳新馬戦は4着に終わったが、2戦目から8戦連続で馬券対象。前走も含めて3勝2着4回。重賞初挑戦となったユニコーンステークス(GⅢ)でもカナルビーグルの0秒2差3着を確保した。前々走はロードラビリンスのハナ差2着に惜敗したが、前走で雪辱を果たし、0秒2差で完勝。上昇ムードに乗ってJpnⅡ・不来方賞へ参戦する。
ハグ
牡3歳 父ジャスティファイ
藤岡健一きゅう舎・栗東
父は史上13頭目のアメリカ三冠馬の栄誉に輝いたジャスティファイ。新馬戦2着から2戦目を1番人気に応えて快勝。3戦目はスタート直後につまづいて11着だったが、続く昇竜ステークス2着。5戦目・バイオレットステークスは最内1番枠に入り、自分の競馬ができず15着。好、凡走の落差が激しいが、鳳雛ステークスを快勝。レパードステークスでも4着を確保した。好位ポジションをキープできれば持ち味をフルに発揮する。
リケアカプチーノ
牡3歳 父トランセンド
菅原勲きゅう舎・水沢
高知8戦2着3回(名古屋・スプリングカップ2着を含む)から転入。初戦のダイヤモンドカップはシーソーゲームの2着に終わったが、地元同士の東北優駿を順当勝ち。3歳重賞・やまびこ賞の選択肢もあったが、岩手古馬の最高峰・一條記念みちのく大賞典へ挑戦。古馬トップに君臨するヒロシクンを相手に激しいデッドヒート。抜きつ差されつの攻防からハナ差で1着。同レース史上初めて3歳馬優勝の快挙を果たした。夏は吉澤ステーブルWESTで休養し、8月上旬に帰郷。JRAの強豪にどんなレースを披露するか注目が集まる。
サンロックンロール
牡3歳 父トビーズコーナー
菅原勲きゅう舎・水沢
門別1100m・2歳新馬2着後、半年余りの休養を経て佐賀へトレード。圧巻の4連勝を飾った。続く1750m戦3着後、岩手へ転入。3歳B1戦を勝ち、東北優駿へエントリー。同厩リケアカプチーノに1秒1差離されたが、2着を確保した。不来方賞トライアル・やまびこ賞は2着に1秒3差で圧勝。完成途上ながら強さが際立っていた。相手は大幅に強化されたが、成長一途をたどっている。





















