前に行きたそうな馬は何頭かいたが、先手を奪ったのは戦前の予想通りマーチボーイ。「ずいぶんとやる気満々でさーっと加速した(小林騎手)」、最内枠の利点もあってすんなりハナを奪う。
2番手は、外からエイブルインレースが行く事もあり得たし実際外枠からダッシュしてきたのだが、その機先を制してアンダージョイナーが2番手を獲った。エイブルインレースは抑え気味にして3番手、フェニックスクインやカミノフジらがこれに続く。
3〜4番手の外という位置につけたエイブルインレースだったが、「先頭に立つとソラを使ってしまう馬なのでハナには行きたくない(宮崎騎手)」同馬にとってはむしろ好都合なポジション。実際1コーナーあたりでも、その気になれば楽に2番手に出て行けそうな脚色だったのを、やや強く抑えて3番手に控えていたのはこういう事情があった。
そして、断然の人気馬が抑えて抑えて3番手に納まった事でペースは当然のごとくスローになる。先行争いこそ一瞬激しくなりかかったものの、1〜2コーナーを通過する頃にはいつもの芝マイル戦らしいスローペースに落ち着いていた。
このペースは逃げるマーチボーイにとっても好都合。「後ろから馬がこないから無理に抑えるまでもなくペースを落とす事ができた(小林騎手)」。そして楽な手応えのまま向こう正面を駆け抜け、3コーナーあたりでは「これなら勝てるんじゃないかと思った(同)」というくらいの手応えを残したまま勝負所に突入していく事になる。
この3コーナーあたりでは先頭マーチボーイ、2番手アンダージョイナー、そして3・4番手がフェニックスクインとエイブルインレースという位置取りは変わらず。カミノフジも依然5・6番手の位置だったが、ここで外からワタリシンセイキが進出、そのまま先頭に立とうかという勢いで外から捲ってきた。このワタリシンセイキの上昇をもって、レースが急速に動き始める。
ワタリシンセイキにあわせてエイブルインレースも上昇を開始、いよいよアンダージョイナーを交わして2番手にあがる。マーチボーイも俄然ペースアップ、手綱を激しく動かしながら4コーナーから直線へと飛び込んでいく。
マーチボーイのスピードはまだ余力十分に見え、逆にエイブルインレースは2番手には上がったもののちょっと伸びを欠いているように見えた。フェニックスクインやイシノイングランドもまだ離されずに食らい付いているくらいで、エイブルインレースの脚色が劣勢にも感じられる。

だがそれは、エイブルインレースにとってはまだ最後のスパートに出ていないだけの事だった。先頭に出るのをなるべく遅くしたいし、そして初コースという事で物見をしたりしていたエイブルインレースがしっかり加速する体制を整えるまで、宮崎騎手はGOサインを出さなかったのだ。
残り一ハロン、いよいよ宮崎騎手がスパートをかける。大きくなった鞍上のアクションにエイブルインレースも即座に反応、グッとスピードを増す。
1馬身ほどに拡がりかけた差が、次の瞬間にはもうほとんど無くなっていた。マーチボーイも抵抗したが、2頭が並んでいたのはつかの間、さらの次の瞬間にはエイブルインレースが先頭に立っていた。
マーチボーイを突き放してしまえば、もはやエイブルインレースを脅かす馬はいなかった。2馬身ほど抜けたところで流しに入ったが、それでもなお差は拡がって3馬身差に。後方では激しい2着争いが展開されていたが、エイブルインレースはそれもどこ吹く風、余裕綽々ゴールを駆け抜けた。
その2着争いは、楽に2着確保かと思われたマーチボーイがゴール寸前急失速、ここにイシノイングランド、カミノフジが襲いかかって、ゴールの瞬間は3頭の馬体が揃った。ここは真ん中イシノイングランドがわずかに抜けだして2着、マーチボーイが3着に粘り、カミノフジは4着。3頭の着差はハナ・ハナの接戦だった。

勝ったエイブルインレースは父フジキセキ・母フサイチエイブルの牝2歳。前走はJRA2歳オープンのクローバー賞で3着と好走しており、実績的にはメンバー中最上位の存在。初コースとこの条件では不利な外枠だけが心配な点だったがこれも難なくクリアしてみせた。
なお、このレースは社台スタリオンステーション協賛・スタリオンシリーズの「オンファイア賞」となっており、優勝馬馬主には副賞としてオンファイア号の配合権利が贈られた。
(写真は副賞目録を持つ柳澤調教師)
早めに先頭に立つとソラを使ってしまうので、できる限り先頭に出ず、ギリギリまで我慢しようと思っていました。直線、反応が悪く見えたのも馬が物見をしてビジョンを見たりしていたからで、それさえ過ぎればしっかり走りきってくれました。ダートよりも芝の方が明らかにいい馬で、素質も高いと思います。JRAのオープンでも戦えそうだと期待しているんですよ。これからの成長が楽しみですね。(宮崎光行騎手)