圧倒的な1番人気に支持されたのはシアンモア記念を勝って再び遠征してきたノムラリューオー。これは分かるとして、2番人気が4歳馬ダンストンリアル、3番人気が愛知・マチカネモエギ。馬複はノムラリューオーからこの2頭への組み合わせが、馬単はノムラリューオー→マチカネモエギの組み合わせのみが10倍以下だった。
ただ、オッズの動きはこれらの“一本かぶり”というよりは、“割れている“という印象を受けた。いろいろな要素を考えると波乱もあり得る・・・という事を、ファンの側は敏感に感じていたのかもしれない。
何が行くか、意外に前に行きたい馬が多くてどうなるかと思われたが、横一線のスタートから押して出てきたのはニシノグレイシャだった。内のノムラリューオーやマチカネモエギ、メタモルキングが行こうとするところを半ば強引に競り勝って先頭へ。最初のスタンド前でははや後続を1馬身、2馬身と引き離していく。
ノムラリューオーは無理に競り合わず、最内を守って5番手あたり。ダンストンリアルがその外で、ブラーボウッズはこの時点で馬群からやや離れた最後方を進んでいる。

ニシノグレイシャが大逃げを打った格好になったがペースはあまり上がらず、どちらかといえばスローの流れ。前ニシノグレイシャ、最後方ブラーボウッズの他の10頭はほぼ一団。そしてそれも向こう正面半ばあたりまでで、残り1000mを通過するあたりでは前後とも一気に詰まって、12頭がひとかたまりになった。
先頭ニシノグレイシャ以下、先行するグループの位置取りは依然変わっていなかったが、中団から後方に動きが出る。後方にいたエアウィードが、そして最後方にいたブラーボウッズが、外を回ってぐいぐいと上昇していったのだ。
特にブラーボウッズはあっという間に先頭をも射程に入れてしまった。これを見た各馬も、コース内側に見切りを付けて外へ外へと動き始める。3コーナー手前では最内から大外まで、10頭ほどが横に拡がるシーンも。2000m戦の終盤にしては非常に珍しい隊形だ。
ブラーボウッズはなんと、3コーナー手前で先頭に躍り出た。これを追うのはマチカネモエギとメタモルキング、ダンストンリアル。ニシノグレイシャはブラーボウッズが先頭に出るのと相前後して失速、ノムラリューオーは、ちょうど前に壁ができて動けないところに入っていたが、しかしそれだけでなくどうも手応えが悪い。すでにムチが飛んでいるにもかかわらず、ついて行くのが精一杯のようだ。
一気に先頭に立ったブラーボウッズだが、まだここではレースを決めたという感じではなかった。後続はまだ食い付いているし、外からはヤマニンエグザルトやマイネルイディオスも追ってくる。瞬間の脚色なら他の方が優勢に見える時もあって、実際、マイネルイディオスの関本浩司騎手などは「直線に向いた時“勝った”と思った」と言う。
だが、そこからのブラーボウッズの粘りはあまりにもしぶとく、そして素晴らしいものだった。
後続に差を詰められそうになったのも坂の下まで。再び差を拡げたブラーボウッズは、バタバタになりながらも懸命にゴールをめざす。気がつけば、後続の方が息切れしたのか、リードが徐々に拡がり始めた。後続の中から唯一明らかに追い上げてきているのはマイネルイディオスだが、しかしこれもすでに脚色はやや見劣る。
ブラーボウッズが先頭に出た時から起こり始めたスタンドの歓声がピークに達した、その時がゴール。着差は3馬身、見事な完勝劇だった。
2着はマイネルイディオス、3着はこれもしぶとい走りを見せたマチカネモエギ。ノムラリューオーは直線でも伸びを欠いて7着に終わった。
勝ったブラーボウッズは父アフリート・母トウシエの牡10歳。一昨年の転入以来オープンを守り、既に8勝を挙げている馬だが、これまで重賞には縁がなくて4着が最高。10歳の初夏にして初めての重賞タイトルを手にする事になった。また鞍上の菅原勲騎手はこの勝利が自身の地方競馬通算3600勝となった。
なお、このレースは「社台スタリオンステーション協賛・クロフネ賞」となっており、優勝馬馬主には副賞としてクロフネ号の配合権利が贈られた。
折り合いには全く心配のない馬なので、どんなペースになってもどこからでも動ける、と安心して乗れる。そして芝ではホント強い馬。スッと伸びる時の脚は本当に凄いよ。今回は58kgだけが心配だった。切れる馬だからね。それで気持ち早く仕掛けてしまったけれど、関係なかったですね。(菅原 勲騎手)